一般社団法人 名古屋芸術大学美術・デザイン同窓会
OB・OGの輪

はじめは、青木高弘会長から

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アレックス・モールトンに魅せられて

「最初は黄色のATBというモデルを中古で。次がモールトン・GT。その後ヴィンテージモデルを集めだしていまや70台ほどあります。家にはとても置ききれないので、あちこちに分散しているくらい(笑)」

 美術・デザイン学部同窓会会長はインテリアデザイン会社を経営している一方で、世界的に知られたアレックス・モールトンという自転車のコレクターでもある。発明した博士の名前がそのままブランドになっているこの自転車は、小径タイヤと前後のサスペンション、ユニークなフレーム構成が最大の特徴。このサスペンションには金属バネのかわりにラバーコーンというパーツが用いられている。クルマにちょっと興味のある方は、オリジナル・ミニの特異なサスペンションを思い浮かべるはず。そう発明者は同じなのだ。

'67年 AM Sレンジ・スピード

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ミノックスはスパイカメラとも呼ばれた

「1965年のスピードシックスというモデルがヴィンテージ・モールトンとの最初の出会いでした。それからは何か引き寄せられるように集まりだして今に至るんです。もっともコレクションを始めた’80年代はまだ値段もそんなに高くなくて気軽に買えたという事情もあるのですが…」

 とはいえ、モールトンに関しての獲得率は99%とか。これには何か不思議な運が向いているようで、イギリスで発行されているモールトンクラブの季刊誌にSレンジ・スピードという希少なモデルの売りたし情報が掲載されたときは、早速連絡したが2番手。しかし最初に手を上げた人が辞退したため、入手できたという。そんな信じられない幸運はほかにもあり、さまざまな貴重なモデルが手元にやってきた。その間にモールトン博士本人とも親交を深め、現在では、『青木が保管してくれるなら安心』といわれるまでになったという。

「博士が言うには、乗り物の進化のなかでタイヤの径が小さくならなかった唯一の例が自転車だと。そこで生まれたのがこの自転車なんです。また、興味深いのは、彼自身は過去の製作物にほとんど執着がないんです。つねに前向きに新しいことを考えているからこそだと思うのですが、これは分野は違っても同じクリエーターとして尊敬できる点ですね」

 写真は’67年のSレンジ・スピードで、世界に5または6台しかないうちのひとつ。台数確定の経緯は、解説しだすとあまりにもマニアックなのでここでは割愛させていただく。もちろん、ほかにも興味のある人なら驚くほど各種のモデルが揃っている。

「いずれはモールトン・ミュージアムのような施設を造って公開したいという夢があります。私のコレクションは一種の文化遺産ですから、散逸させてはならない。そして、いずれはこの思いを引き継いでくれる人に託すのが使命だと思っています」

 このほかに超小型カメラのミノックスの膨大なコレクションやランチァ・ストラトスをはじめとする数台の車たち。さらには陶器までと収集の範囲は広く、この紙幅ではとうてい紹介しきれないほど。同窓会事務局としては、取材対象に困ったら、また会長をスタートにすればいいという意見も出るほどなのでした。

ランチァ・ストラトス

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