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生命観を表現したい

「テーマは一貫して、”人体とは”と自分に問いかけたうえでの表現です」

自身の作品についてこう語る河村さんは、2007年第39回日展で特選を受賞した。作品のタイトルは”ひととき”このタイトルには30年にわたって探求し続けてきたテーマが反映されているようだ。

「人体の表層を見るのではなく、そのなかには川と同じような流れがあり、しかもゆるやかだったり激しかったりと、さまざまに変化しています。そこからもたらされる生命観を表現したい。そんな思いで今日まで制作活動を続けてきました」

ひととき 2007第39回日展 特選

ひととき 2007第39回日展 特選

その流れを感じ取るために街中での人物ウォッチングをはじめとする、さまざまな感覚を研ぎ澄ますためのトレーニングを重ねた末に行き着いたのが「瞬間を長い時間に。一瞬に動きを表現するということ」だという。受賞作品のタイトルが『ひととき』というのも、その象徴といえるだろう。
さまざまな質問への答えを得たうえで推測すれば、人の動きには制止している瞬間はほとんどなく、何かしら変化している。その過程の一瞬を切り取ることによって、それをはさんだ過去はもちろん未来までも表現しようとしているのではないだろうか。たとえば”ひととき”というタイトルの裸婦は、切り取られた一瞬のポーズに至る直前にどんな動きをしていたか、そしてこれからどのような動作をするのだろうかと、鑑賞者に想像させるパワーを内包していると感じられる。
彫刻作品の制作手法は、粘土だけの一品ものから石膏で型取りしFRPで整形したものにまでおよぶという。
「これまでに数百の作品を制作し、そのなかで壊したものは数知れず。これはダメだと思うともう先がないんです」と語る一方で「古い作品でも、納得できないものは手直ししたりもしています。それだけ自分の感覚が進化したり変貌したりしているんでしょう」とも付け加えるストイックな姿勢は、さまざまな作品から漂うオーラが雄弁に物語っている。
河村さんは、作家活動のほかに、教員として後進の指導にあたるだけではなく、さまざまな展示の解説なども行っている。その根底にあるのは、表現者として追い求めているテーマへの熱い思いなのだ。

秋意 1994第25回日展 ハーモニー春日井設置

秋意 1994第25回日展 ハーモニー春日井設置

友 1999 第31回日展 第30回東海展 中日賞

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宴 2004 第33回日彫展 日彫賞

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