一般社団法人 名古屋芸術大学美術・デザイン同窓会
OB・OGの輪

創造的なライフスタイルとは

暮らしと仕事、すべてをデザイン

種村寿一さん デザイン科 20期卒

「生活空間と人間工学に関するすべてのデザインを楽しんでいる、というのがいまの私。生活空間はこの家とそれに付随する家族の暮らしのすべて。人間工学は自動車のインテリアデザインという仕事としてという意味です。ただ、ファッションだけが(笑)、担当者が違う」

と、傍らに坐る夫人を笑顔で示す種村さんは、自宅の新築に際して、土地の選定からデザインまで、とことん自分らしさを追求し、その過程を、イラストや写真を用いて自身のサイトhttp://www.geocities.jp/shiroiestyle/index.htmlで紹介している。1998年、土地探しから計画がスタートし、土地は購入したものの紆余曲折があってさらに着工まで6年。2007年2月に一応の完成は見たが、現在もアップグレード中だ。そこで、なぜそうまでしたのでしょうと聞いてみた。
「南欧風とか純和風とか、家のスタイルっていろいろありますよね。でも自分の感覚にはマッチしない。私たち家族の生活にぴったりの家、普通に居心地の良い空間がほしかった。オリジナリティを追求したら、結果としてこの家ができたということでしょう」

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家のイメージモデルは折り紙製。種村さん
のアイディアを建築家が採用し、具現化し
たという

南側からの全景

ストライダ1,0は三角の構造が特長。頂点部分がはずれて折りたためる

BSグランテックは、フレームの中心で2つ折りする

アクション1は前後方向に折りたたむ

最近お気に入りの折りたたみ電動アシスト自転車は出動待機状態

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広々とした1階のリビングルームの奥には、1段高い畳スペース。全体の平面形は三角なのだが、それを感じさせないつくりだ。

「実は90°以下の角が見えないようにしてあるんです。ほらこんなふうに」

と、壁の引き戸をスライドさせると、納戸の奥に鋭角が隠されていた。

「あちこちのコーナーを鈍角に処理して、窮屈な印象を回避してるんですよ。さらに水平のつながりを意識して、ダイニングテーブルと畳コーナーの座卓の高さを連続面にできたりもするんです」

そう言われて見渡してみると、キッチンの天板とそれに続く壁際の棚も連続面で、あちこちを整合させていることがわかる。キッチンの床面は1段下げてあり、調理をしている人と椅子に座っている人の視線も、高さが合うようにしてあるという。

「アイディア重視といえばそれまでですが、自分たちにとっての居心地の良さはこんなところからも生まれると思います。しかも完成した後の追加工事はDIYとして楽しんでいますから、意外にリーズナブルなんです。失敗(笑)もありますが、それも楽しみのうちということで…」

前述のサイトにはさまざまな写真が掲載されているので、家づくりを考えている方はぜひご参照ください。

ところで、2階に通じるらせん階段の基部にはストライダ1.0がディスプレイしてあった。さらにその上の壁際にももう1台。

「もう乗らないけどカタチが好きなんで飾ってあるんです。僕は折畳み自転車が好きなんですが、そのきっかけがストライダでした」

在学中、和田教授に師事した種村さんは、教授のRCA(Royal College of Art)時代の同級生であるマーク・サンダースがデザインしたこの自転車を知り、デザインに魅せられて夫人用と合わせて2台購入したという。「乗り味も独特で…」と、乗らなくなった理由について多くは語らない種村さんが、「で、次に買ったのがこれ」と、指さしたのは2階の納戸の奥に置かれた、ブリヂストンのグランテックだった。

「これは26インチの折畳みなんですが、よく考えてつくってあって剛性も高い。そこが気に入っています」
デザイン的には素晴らしいストライダだが、どうやら剛性不足が……だった様子。つけくわえれば最新型はかなり改善されていると聞く。またブリヂストン製も、トランジットスポーツと名前を変えていまも現役。どちらも現行型が生産されているから、寿命の長い製品=優れたプロダクトとすれば、選択眼が確かだったといえる。

「まだ、ありますよ。これは宮田のアクション1。外の車の中にも電動アシストの折畳みがあります」

と、並みではない懲りよう。キャンピングカーはもう一つの趣味なのだが、それについてはサイトをご参照ください。それぞれの自転車は使いやすいように、ブレーキやギヤなどのパーツを交換して楽しんでいて、以前には琵琶湖一周サイクリングイベントを企画していたこともあるとか。さらに社内報の編集を担当していたときには、YS-11という超軽量折畳み自転車の開発者にインタビューしているほど。

「こうしてみると、折畳み自転車の世界への入り口は外国製だったけど、いまは日本製が好みみたいです。これは自転車に限らず、すべてのデザインに通じる最近の傾向でもあります。自分も含めてですが、日本人のデザイナーはもっと頑張らなきゃ、という思いもあって…」

「家、自転車、クルマ、もちろん仕事でも、問題を発見して、解決するプロセスを楽しむ。それが大切だと思います」
デザイナーという視点から生活のすべてをエンジョイするためには、そんな気持ちをいつも持ち続けていること、と語る種村さんは、最近、社内で20代の人たちを対象にしたグループの絵の講師を務めているという。

「なんかみんな同じような絵を描くんです。つまらないなあと」

その原因は、自主的に活動して失敗や遊びをたくさん経験していないことではないかと分析する。

「いろんな情報やモノを与えられているだけだとそうなるのかなあ。と、考えたりします。自分の頭で考えればきっと面白いはずなのに…」

自分の頭で考えた結果、暮らしを楽しんでいる人らしい感慨なのでした。

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